幕末怪異聞録
「何だよこれは。」
「報酬だ。」
「はぁ!?二十両って――」
「三日前の騒動に、余分に四泊の金。合わせたらそれくらいになるだろうな……。」
ニヤリと笑う土方に、睨みで誰か殺せるんじゃないかってほど睨む時雨。
「似非武士野郎が……。」
そう吐き捨てて、二両を手に部屋を出て行こうとした。
「あ、時雨!」
「なんだ!」
「茶、ありがとう。」
「―――ふんっ!」
差し出された湯飲みを奪い取り、荒々しく部屋を出て行った。
(くそっ!あんな風に笑って礼を言われると金を分捕る気にもなれんわ!!)
「……。」
そして、顔を赤くして怒っていたにも関わらず、それが一気に青くなった。
「はぁ……。」
(太刀折ったことすげえ怒りそう……。)
心此処にあらずと言わんばかりに足取り重く、湯飲みを洗いに言ったのだった。