幕末怪異聞録


「んで?親父さんとこ行くんだろ?」


ある程度来たところで狼牙は時雨に声をかけた。


時雨は、心底嫌そうに頷いた。

そんな時雨に苦笑いをして、目的地に向かった。










「こんばんはー。」


ボロ屋の戸を開けると横になっているおっさん……


「おお!!時雨やないか!」


「……父さん部屋片づけたら?」


「かまへんかまへん!どうせ仮屋やしな!」


ガッハッハッ!と笑うおっさん…もといい時雨の父。


そんな父にため息をついたが、来た目的を思い出した時雨は、すぐに顔を引き締めた。


「なあ、父さん。」


「ん?どうした。」


背中にある太刀を鞘ごと前に差し出し、横に抜いた。


「折れた。」


「……。」



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