幕末怪異聞録


「さて、私らはもう行くか。」


「ん?どこ行くの?」


「寺田屋だ。」


それを聞いた瞬間沖田と原田の雰囲気が変わった。


それに気付いた時雨は首を傾げた。


「何かあるのか?」


「仕事か?」


「うん、泊まり込みでな。」


すると「うーん…」と唸る二人。


(一体何なんだ!!)


そんな思いが顔に出ていたのか、沖田は困ったように笑った。


「寺田屋は二年前に薩摩藩の尊皇の過激派がよからぬ事を企んでいて粛清された宿なんだ。
薩摩の定宿だっていう噂もあるし、そんな危険な宿に泊まるのはあまり勧めないな。」


「ふーん…。」


興味ないと言わんばかりに気の抜けた返事をした時雨は立ち上がった。


「ま、私には関係ないよ。
行くぞ。狼牙。」


「ちょっ……!」


「御馳走様、左之。」


沖田の忠告もろくに聞かず甘味屋を出て行ってしまった。


(過激派……ね…。)


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