幕末怪異聞録


いつになく殺気立つ時雨に気付いた狼牙は「落ち着け。」と声をかけたが上の空であった。



「―――此処です。」


そう言うと逃げるように行ってしまった宿主に時雨は些か悪いなと思ったが、すぐに気持ちを入れ替えた。


(西沢だったらブった斬る!)


そう思いつつ、スパーンと襖を開けた。







「―――誰…?」



目の前には知らない男が三人座っていた。


「おぉ!やっと見つけたきに!」


「見つけたのは、あのおっさんじゃ!自分の手柄みたいに言うんじゃない!」


ギャーギャー言い合う二人にポカンとする時雨と狼牙。


そんな二人に近付いたもう一人の男。


「そがいなとこで立っちょらんで、どうぞ中に入るがじゃ。」


「は、はぁ…。」


促されるも入ったが、どう言う状況かさっぱりな時雨はぼんやり当たりを見渡すぐらいしかできなかった。



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