幕末怪異聞録


俯いていた顔を上げ、坂本を見た。


「私の夫がそう言ったんならあんたの世話になる。よろしくお願いします。」


「そ、そがに頭下げな!」


指をつき頭を下げる時雨を慌てて起き上がらす。


「儂がおまんの助けをしたいだけじゃき、気にせんと此処で過ごしたらええ!」


「―――ありがとう…。」


「そうじゃ!紹介してなかったのう!
この厳つい男が岡田以蔵。そっちの男が中岡慎太郎じゃ!」


どうやら坂本と言い合っていたのが岡田以蔵で、立っていた時雨を中に通したのが中岡慎太郎らしい。


「私は灰鐘時雨。こっちのが狼牙だ。因みに―――」


ポンッと狼牙の肩を叩くとボフンッと犬の姿になった。


「妖怪だから。」


「時雨も半分妖怪だろ!」


「…。」


一同がしゃべる犬に何とも言えぬショックを受けたのは言うまでもないだろう。


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