幕末怪異聞録


「おじさーん!大根ください!」


「はいよー!
おや、時雨ちゃんやないの。いつも偉いね。」


「ふふふ。これくらい当たり前ですよ。」


「そう思てるのが偉いんやで?」


「そんなもんですかね?」


「そんなもんや!」


「あ、私もうそろそろ行きますね!大根ありがとうございました!」


「気を付けて帰りぃや!」


「はーい!」


こうして大根を手に入れた時雨。

今のやり取りでも分かるように時雨は町の人から可愛がられているのだ。


だから帰っていても

「時雨ちゃん!」

とよく声をかけられるのだった。


そんなとき何処からか罵声が聞こえてきた。



「おい姉ちゃん!てめぇのせいで俺の着物が汚れたじゃねえか!どうしてくれんだよ!」


見てみると、団子屋の女子が転げて男の着物に茶がかかったらしい。



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