幕末怪異聞録
目の前にいる山南は刀を握り、八木邸を出ようとしていた。
「山南殿。
そのような物を手に持ってどこへ行くつもりじゃ?」
灰鐘は幾分笑顔を心がけながら尋ねた。
その右手は腰の刀に伸びていた。
「何ですか?私は刀が振るえるのです!
巡察へ向かわねば…。」
眼鏡の奥で怪しい眼光に灰鐘はため息をついた。
「お主、新選組の総長じゃろ?
そのようなあやかしに心を操られるでないぞ。
まぁ、言葉も届いておるまい…。」
そこまで言うと灰鐘は刀を抜いた。
それは鍔がない、刀身が黒い異様な刀であった。
「主ら決して手を出すんじゃないぞ?」
沖田らを一瞥して、灰鐘は山南に向かって刀を振るった。
「あやかし退治の始まりじゃ!」