幕末怪異聞録


「――時雨じゃねえか。」


「ん?新八か……。

巡察中か?」


そこに現れたのが巡察中の浅葱色の隊服を着た永倉であった。


どうやら騒ぎがデカくなっていたため通りがかった巡察中の永倉率いる二番組が来たのだった。


「し、新選組!?」


新選組と分かった瞬間、男は脱兎の如く走って逃げてしまった。


「なんだ。だらしねえ男だな。
新選組見たくらいで逃げるなんて。」


「普通は逃げんだよ。
それよか時雨、怪我してねえか?」


「平気だ。それじゃあ私はお遣い中だからもう行く。」


「おう、そうかい。」


そう言って何もなかったように行ってしまう時雨の背中を眺めていたら、急に時雨が振り返ってきた。


「そうだ。

助けてくれてありがとな。助かった。」


「!!」


それだけ言ってまた踵を返して行ってしまう時雨だった。



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