幕末怪異聞録


――――――――――………



世の中はいつも無常である。


希望とは逆の事が起こる。


願ってもないことが起こるもんだ。


今日もまた然り……



(何か見てはいけないものを見た気がする……。)


退治屋の依頼をこなした帰りだった。


ある店に人集りができていたため、何事かと顔を向けると、新選組が改めの最中であった。


「堪忍しておくんなさい……!」


「何言ってるの。それを決めるのは僕じゃないから。じゃ、屯所に行こうか♪」


男を連れて行ったのは新選組一番組の隊士らだった。


「行こうか、狼牙。」


「う…ん。」


「いいから。」


物言いた気な狼牙の腕を引っ張った。


そんな時雨の背中を見ながら狼牙は口を開いた。


「時雨!あいつ鬼のニオイが――!!」

「いいんだよ。どうせすぐにバレるさ。」


チラリと目を向ける時雨に狼牙は「分かったよ」と力を抜いたのだった。



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