幕末怪異聞録
――――――――――……
「――時雨。」
「ん――…。」
ユサユサと肩を揺さぶられ、顔を上げた時雨の目の前にいたのは、岡田であった。
「あれ?私寝てた?」
くわっと欠伸をする時雨の顔を呆れたように見た。
「そんなん見た通りじゃ…。
それより、早よ帰ってこんけぇお登勢さんが心配しとるきに。
早よ帰るぜよ。」
「んあ?
そりゃあ悪いことしたな…。
狼牙、ちゃんと起こせよ。」
「起こしたけど起きなかったんだよ!」
「どうだか!」
「信じてよ!」
「五月蝿い!!さっさと歩け!」
「はいはい。」
クスクス笑う時雨。
“人斬り以蔵”と呼ばれ恐れられている岡田。
粗雑な部分は多々あるが、意外と面倒見がよく、時雨は一応一人の人間として認めていた。