幕末怪異聞録
池田屋内はムワッと暑く、血脂の臭いが充満していた。
「――って、平助!?お前大丈夫か!?」
階段を上がった所に倒れていたのは藤堂だった。
「あ…れ?
し…ぐれ…さん…?」
辛うじて意識はあるものの、額がパックリ裂けていた。
「こんな所いたら斬られるぞ?
外に出る。立てるか?」
腕を掴み、立たせようとすると藤堂はそれを制し奥を指差した。
「俺の事はいい…から。
それより…奥で総司が…戦ってる。」
「え?でも平助が…。」
「いいから…。
隊士の誰かが来るし…。早く、行って……!」
「わ、分かった!」
藤堂の後押しもあり、時雨は奥にいる沖田の元へ向かった。
(あの部屋が“黒”だな。)
そこに時雨の探し求めている物があると踏んでいた。