幕末怪異聞録
部屋に着いた時雨はそっと中の様子を窺った。
(あれだ。)
中では、禍々しい妖気を放つ男と沖田が戦っていた。
(総司のやつが倒してくれんかな……。)
なんて思っていたが、そうもいかないようだった。
『どうした?足元が覚束ねえぞ?』
「うるさいな…。僕は至って元気だけど?」
不適に笑う沖田だが、その顔には脂汗がにじみ、息絶え絶えであった。
「――それじゃ……行く…」
カシャン……!
『もらったあ!!』
ぐらりと目眩がした沖田は床に手を付き、その隙に相手が斬りかかってきたのだった。
もう駄目だと覚悟をした時だった――
キーン!!
「なんだ、総司。もう諦めるのか?」
沖田の目に映るのは黄金色の髪だった。
「――し、時雨……?」