幕末怪異聞録
『そうか……。
覚悟を決めている奴に“生かしてやる”と言うのは失礼だったな…。
手加減しないぞ。』
「当たり前だ。」
カチャリ……
吉田も真剣な眼差しに変わり、お互いに構えた。
ダンッ!
キンッ
キンッ!
「くっ…!」
(やはり強いな……。
だがっ!)
「はぁあ!」
気合いを入れ直し、刀を振るう。
その姿はまさに“武士”だった。
ザシュッ!
「ぐっ……。」
ボタタタッ……
一瞬の隙に時雨は吉田に脇腹を斬られたのだった。
フラフラしながらも構える時雨。
『――女なのにそれまでに復讐に囚われているのか…。
実に哀れだ。』
眉尻を下げてそう言う吉田。
(“哀れ”か…。端から見れば、私はそう写っているのか…。)