幕末怪異聞録


一方、バタバタと走る時雨。


どうやら落ち着いたらしく、静かであった。


「あ!時雨!!お前何だってこんなとこに――!」


「ああ!新八!いいところに!
って、あんた親指の付け根!!」


座り込んでいた永倉の左腕を掴むと、その親指の付け根の肉がぱっくり裂けていた。


「ちょっと動くなよ…。」


ビリビリ…!


懐から手拭いを取り出し、それを割いて永倉の傷口に巻き付けた。


その手早い手当てに永倉は「ありがとう。」と言いつつ感心した。


「それよりどうしたんだ?急いで。」


「総司が倒れたんだ。奥の部屋だ!見ててやってくれ!私は誰か呼んでくる!!」


「何!?分かった!」


そう言って永倉は沖田の元へ行った。


(とりあえず外に出るか…。)


汗を拭い、再び走り出した。



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