幕末怪異聞録



「―――土方……!」


そんな攻防が起きているのも露知らず、時雨は外にいた土方に声をかけた。


土方もまさか中から時雨が出てくるなんて毛ほども思っておらず、目を見開いたのだった。


「時雨!!何故お前が池田屋から出てくんだよ!」


「んなこたどうでもいいんだ!
総司が二階の奥の部屋で血ぃ吐いて倒れた!新八が行ったが、他に誰か向かわせてくれ!」


「何!?あの総司が!?

おい!!誰か行ってやれ!総司が倒れてる!」


血を吐いたのは時雨のせいであるということは今は伏せておこう。


血で染まった着物で、土方に話す時雨を見た会津や桑名藩は、皆が一様に池田屋に入りたがらなくなったのだった。


「って、お前も腹斬られてんじゃねえか!」


「あ。そういえばさっきから目が霞む……。」


「じゃあそこで座っとけ!!」


< 161 / 321 >

この作品をシェア

pagetop