幕末怪異聞録
「―――土方……!」
そんな攻防が起きているのも露知らず、時雨は外にいた土方に声をかけた。
土方もまさか中から時雨が出てくるなんて毛ほども思っておらず、目を見開いたのだった。
「時雨!!何故お前が池田屋から出てくんだよ!」
「んなこたどうでもいいんだ!
総司が二階の奥の部屋で血ぃ吐いて倒れた!新八が行ったが、他に誰か向かわせてくれ!」
「何!?あの総司が!?
おい!!誰か行ってやれ!総司が倒れてる!」
血を吐いたのは時雨のせいであるということは今は伏せておこう。
血で染まった着物で、土方に話す時雨を見た会津や桑名藩は、皆が一様に池田屋に入りたがらなくなったのだった。
「って、お前も腹斬られてんじゃねえか!」
「あ。そういえばさっきから目が霞む……。」
「じゃあそこで座っとけ!!」