幕末怪異聞録
「入るぞー。」
「だから先に断ってから入れ!」
時雨は土方の部屋に向かっていたのだった。
「で、傷の具合はどうだ?」
「あぁ、傷口は塞がった。
すまないな、毎回毎回世話になって……。」
「全くだ!お前は―――」
「時雨ー!傷は大丈夫なの!?俺、すげえ心配したんだよ!!」
「うわぁっ!狼牙!私は大丈夫だから騒ぐな!鬼さんが今にも殴りそうだから!!」
時雨が池田屋内に入ってから出番がなかった狼牙。(かわいそうだから出してあげました(笑)by作者)
土方を遮り登場したもんだから土方の額には青筋が……
「犬は庭で遊んでろ!」
首根っこを摘まれ、狼牙は庭へ放られたのだった。
「遊んでてな?」
時雨に助けを求めるような瞳を向けだが、そんな思いも通じるわけもなくピシャリと閉め出されたのだった。
(時雨の心配しただけなのに……!)