幕末怪異聞録
「もう一つ、髪と右目、何故黒い?」
池田屋から帰ってきてから時雨の髪どころか、右目まで黒かった。
以前は目立つ黄金色の髪に、それで隠す右目は灰色の筈であった。
「恐らく、急に半分妖力が戻ったことで、それを抑え込もうとする霊力が働いているんだ。
その上、怪我を治すのに身体が勝手に妖力を使ったんだろ。だから今九割人間だ。
まぁ、数日すれば髪色も目の色も戻るよ。」
そう言うとぐっと背伸びをした時雨。
そして崩していた足を正した。
「それより私、気になることがあるんだが…。」
「……何だ。」
急に真面目になった時雨に土方は眉間に皺を寄せた。
「鬼尋坊は両方とも西沢の手元にあった筈なんだ。」
「――そりゃあまさか……。」
「西沢と長州は繋がっている。」