幕末怪異聞録



灰鐘は山南の左肩を突き刺し、素早く抜き去った。




「ぐぅ…!」



左肩を抑え跪く山南を灰鐘は見下ろした。



その隻眼は酷く冷たかった。



「早よ出てこんか…!
切れかけの繋ぎ目は痛いじゃろ?」



そう言い終わった瞬間、左肩から黒い影が出てき、山南はそのまま倒れてしまった。



『貴様、よくも俺を斬ってくれたなぁ!』



そこに現れたのは人、二人分の丈を持つ鬼だった。



「ほぉ…
やはり鬼じゃったか。

小物だがの。」



『何だと!?』



不敵に笑う灰鐘に鬼は見る見るうちに怒りを露わにしていった。



『潰れろ!!』



ドカーン!!



鬼の大きな握り拳が灰鐘を狙って落とされた。



「――!!

灰鐘!!」



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