幕末怪異聞録
「何があるかは知らんが、私は出て行く。
些か気になることもあるしな…。」
「どこに行くんだ?」
「長州だ。」
「は、はぁぁああ!?」
思わず大声を上げた原田にまたしても怪訝な顔を向けた。
時雨は、池田の時に長州藩士が西沢の鬼尋坊を持っていたことがずっと気になっていた。
見て確かめるが一番だと思い、長州へ行こうと思ったのだった。
「長州は止めとけ!」
「お前に指図される謂われはない。」
「なっ……!」
他人の意見を全く聞かないのは相変わらずと言うか……。
寺田屋に行くのを止めたときも言葉を聞かなかったことを思い出した。
(コイツは一回決めたらそれを曲げないからな……。)
原田は困ったと言わんばかりに頭をかき、ため息をついた。
「お前は頑固だからな……。
だが、行くのは延ばせ。その方がいい。」
「まぁ、延ばすくらいならかまわないが……。」
「よし、いい子だ!」
グリグリと時雨の頭をなでて原田はその場を去ったのだった。