幕末怪異聞録
見たことのない顔だと思いながらも、時雨は坂本のそばに腰を下ろした。
「こん方は長州藩士の桂小五郎さんじゃ。」
「長州……。」
坂本から紹介された男の、“長州”という単語に時雨は反応した。
「桂小五郎です。よろしく。」
「灰鐘時雨。退治屋だ。よろしく。」
素っ気なく答える時雨だが、桂は“退治屋”という単語に興味を持ったようだ。
「退治屋?」
「そう、退治屋。」
西沢と手を組んでいるかもしれない長州の人間に警戒していた。
「なぁ、長州は西沢雅って言う奴と手を組んでいるのか?」
「―――!?」
時雨の言葉に桂はピクリと眉を動かしたが、何も言う気配はない。
「そうか……。やはり池田屋の時に折ったのは西沢が渡していたのか……。」