幕末怪異聞録


それから時雨は、桂に今の自分の身の上を話した。


西沢が自分や家族に何をしたのか。


もちろん鬼尋坊の事も。






「―――なる程……。」


桂はそれだけ言うと黙り込んだ。

だが、次に口を開いたのは坂本だった。


「時雨さん、西沢っちゅーもんを殺す為に江戸を出たがかえ!?」


「え?言ってなかったっけ?」


「言っとらん!それに池田屋ってどういうことじゃ!?」


「ご、ごめん。
だって鬼尋坊があるかもーって思ったし……。」


「無茶したらいかんぜよ!

で?今までどこにおったがか?」


「えーっと……。怒んない?」


「怒らんぜよ。」


「新選組の屯所……。」


「何!?時雨さんは馬鹿か!!」


「やっぱり怒ったー!!」


いつもニコニコ笑っている坂本だが、珍しく怒っていたのだった。



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