幕末怪異聞録



「西沢は恐らく、晋作といる。」


「え?」


急に口を開いた桂に驚く時雨だが、それよりも……


「晋作って誰?」


また訳分からんのが出てくるのかと若干うんざりもしつつ、重要な手掛かりだと思った。


「高杉晋作。長州の人間だ。

……君に話していいものか…。」


「信用できないのは分かる。だが、私は誰かを“売る”ような真似は絶対にしない。命をかけてもいいぞ。」


ニヤリと笑うも目の奥に光ものは嘘をついていないと感じた桂。


「――長州は池田屋の件で怒りが頂点にきている。」


「……。」


池田屋の中にいて、尚且つ不本意ながら長州の人間一人死なせてしまった時雨は何も言うことができなかった。


「それで、一部の過激な奴らが京に乗り込もうとしている。それを止めに来たのが僕と晋作。
で、その過激な奴らに発破をかけたのが西沢なんだ。」


「え?」


なんつーことをしてんだと思い、顔をひきつらせる時雨だった。



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