幕末怪異聞録
「お前、何を隠している?」
土方はギラリと双眼を光らせ、灰鐘を見据えた。
そんな土方を見た灰鐘は肩を竦めた。
「何故私がてめぇに私のことを言わなきゃならねぇんだよ。」
「!!」
先程と違う口調に変わったことに加え、凄まじい殺気に土方は一瞬身じろいでしまった。
だが、そんな空気を一掃するやつが部屋に入ってくるのだった。
バーンッ!!
「時雨ーー!!
お前こんな所にいたのかよ!
俺がどれだけ探したと――」
急に部屋に入ってきて灰鐘の懐に飛び込んだのは黒い毛をした子犬だった。
灰鐘はそれの頭をを鷲掴みにして自分の顔まで持ち上げた。
「てめぇ、ギャーギャー騒いでんじゃねぇよ。
その尻尾、へし折るぞ?」
そう言って、ポイッと隅に追いやった。