幕末怪異聞録
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「―――では、もう行こうかのぅ……。」
「え?もう行くの?」
久々に会ったのだからもっと話しをしたかった時雨。
「まだおりたいんは山々なんじゃがのぅ、これから人に会わないかんきに堪忍な。」
「……それじゃあ仕方ないね…。気を付けてな。」
時雨は一瞬寂しそうな表情を浮かべたがすぐ笑顔を浮かべて坂本を見送った。
坂本も笑顔で返し「それじゃあの。」と言って少し歩いたが振り返り、
「また会いに来るぜよー!」
と大きく手を振って行ってしまった。
「―――行っちゃったな……。」
はぁ……とため息をつき、足下の小石を軽く蹴った。
『――おい、時雨。此処は神社だ。死んだ人間に言葉を手向けても伝わらんぞ。』
急に現れたのは、この神社で祀られている神だった。
そんな神に時雨はうんざりしたような顔を向けた。
「神だったらその言葉を死者に伝える位の働きしたらどうだ。」