幕末怪異聞録


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「ーーはい、潜入成功。」


先程とは打って変わり、時雨はとある屋敷に殴り込み(?)に来ていた。


(やはり当事者に話を聞かなければ話にならんからな……。)


不法侵入した挙句、堂々と歩いているこの屋敷は、あろう事か長州藩邸だった、


コンの話を聞いた後、それでも些か納得のいかなかった時雨。

事を企てたのは長州だと聞いたため、一人で乗り込み、繋がりのある桂小五郎に会いに来たのだ。


因みに、時雨は長州に追われている事を侵入する直前に思い出したため、バレないように結界を張って進んでいるのだ。(侵入する時点でバレてはいけないが……。)

そもそも鬘で黒髪な上に三年前の出来事だったため、皆忘れているだろうと高を括っていたのだ。


(桂はーー……。)


キョロキョロと見回り更に奥へ進むと、ある部屋の前に止まった。


そして、何も言わず襖をスパーンと開けた。


「失礼するぞ。」


「ーー!?

な、何なんだ!!」


「何なんだは此方の台詞だ馬鹿野郎。」


突然入って来た時雨に戸惑う桂。

そんなことお構いなしにズケズケと桂のそばまで進み、そのまま腕を組んで仁王立ちをした。


何とも言えぬ威圧感にたじろぐ桂は、少ししてから時雨の事を思い出した。


「ーー貴女は時雨さんか?確か、坂本君と仲の良かった……。」


「覚えていたんだな……。今日訪ねて来たのは、その“坂本君”について聞きたいことがあってな。」


努めて笑みを浮かべているが、隠しきれていない納得のいかぬ顔を見ると何を言いたいのかすぐに分かった。






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