幕末怪異聞録
その言葉に灰鐘は振り返り、ニヤリと笑った。
「さぁ?
どうだろうね。」
「てめぇ!どこまでほんと――!」
「狼牙!行くぞっ!」
言葉を遮るように灰鐘は叫び、縁側に向かい走り、飛び跳ねた。
『ワォーン!!』
灰鐘はタイミング良く大きな狼に変化した狼牙の上に跨り、上空へ逃げてしまった。
「土方!今回の報酬は一宿一飯で勘弁してやる!
それじゃあのぅ!」
ひらひらと手を振る灰鐘は、狼牙と共に消えていってしまった。
「やられましたね、土方さん。」
「あぁ。」
土方の隣に立つ沖田はどことなく楽しそうに笑っていた。
「全てが嘘だったと思いますか?」
「いや、最初は本当のことだ。
だが、後半が嘘くせぇ…
ま、どの道俺たちにゃ関係ねぇことだ。詮索するのは止めとけ。」
「はーい。」
土方は何もなかったかのように部屋に戻ってしまった。
(灰鐘…時雨、か。)
こうして、灰鐘と新選組は出逢ったのであった。