幕末怪異聞録
油
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「……。」
難しい顔をしたまま、外を眺める時雨。
あまりにもずっと外を眺めているものだから、狼牙は痺れを切らし声をかけた。
「どうしたんだよ。そんな難しい顔して……。」
こうは言ったものの、時雨とある程度長い付き合いになるから、何となく状況は理解していた。
そんな時雨は、ゆっくりと息を吐き、狼牙の方に顔を向けた。
「———嫌な予感がしていたんだが、今回はチラッと未来の様子が視えてしまった……。」
「………は?」
昨日事件に巻き込まれたのに、また何か起こるのかと顔を引きつらせた狼牙。
時雨も同じ気分なのか、些か顔を引きつらせながら頭をかいた。
「さてどうしたもんかな……。」
「どんな未来が見えたんだ?」
時雨を途方に暮れさせる未来とは、どんなものなのか気になった。
しかし、時雨は「こればかりは言えない。」と言われてしまったが、「ただ……」と言葉が続いた。
「新選組に関する未来だった……。」
「——!!」
息を飲んだ狼牙だが、顔は実に嫌そうだ。
時雨もまた然り……。
(———またあいつらに関わってしまうのか……。)
そう思いながら時雨はため息をついたのだった。