幕末怪異聞録
何かと縁があった新選組。
時雨はふぅっと息をはいた。
「——で?どうすんの?」
「どうすると言われてもな……。そもそも一瞬過ぎていつそれが起こるのか分からなかったしな。どうしようもない。」
(だが、一瞬視えたそれが結構問題だったんだよな……。)
どのような内容だったのか時雨にしか分からないが、時雨の眉間に深く刻まれている皺を見ると、やはり大した内容であるのは分かった。
だが、時雨は不意にニコッと笑った。
「————!?」
「考えても仕方ねぇ。視なかったことにする。」
「いやいやいや、匙を投げんなよ。」
「知らん!私がどうこう言う問題ではない!」
そう言うと時雨はふて寝を始めた。
「全く……。」
事を投げ出す時雨を見たのは初めてだった狼牙。
(よっぽどな内容だったんだろうな……。)
はぁっとため息をついた狼牙は、布団を出し、時雨にかけた。
昨日の今日でまだ疲れているんだろう。
狼牙は、時雨との旅を思い出した。
(———あんな辛そうな時雨を見るのはもう勘弁したいな……。)
時雨の平穏な日々を護るには早く京を発つべきかもしれないと感じる狼牙だった。