幕末怪異聞録
お梅
□□
―――――――――――………
そよそよと金色の髪をなびかせ、灰鐘はその顔を狼牙の灰銀色の毛に埋めるのだった。
「――何で嘘ついた?」
「ん?
別に嘘なんぞついとらんぞ?」
クスクス笑う灰鐘はギュッとその毛を握った。
「――私は…
幕府が嫌い。
武士だなんだと偉ぶる奴が……
大嫌いだ。」
その声は震え、とても弱々しいものだった。
「―――そうだな……。」
優しい声色で呟くその声は、まるで小さい子をあやすようなものだった。
「着いたぞ?」
「………ちょっと待て、まだ上空だぞ?」
ちょっとしんみりした空気があっと言う間に消し去ってしまった。
灰鐘は狼牙が気を使ったのかと思ったが、気が使える程賢くないと思い直し、狼牙の毛を引っ張った。