幕末怪異聞録
「何故下りないんだよ!」
「下りれないんだよ!」
「何でだよ!」
「下見てみろよ!!」
少しの押し問答の後、灰鐘は不服ながら身を乗り出し下を覗き込んだ。
「……。
家どこ行った?」
「山の方で雨が降ったんだろう。
……だから河辺に家を建てるなって言っただろう?」
「…。」
灰鐘らはどうやら河辺に家を建てていたらしく、雨のせいで川が増水し、流されたようだ。
狼牙と言い合いする気力もなく灰鐘はただ、家があった場所を眺めるだけだった。
「まぁ、そろそろ奴に見つかる頃だったから丁度よかったんじゃないか?」
「確かにそうかも知れんが…。
どこに泊まる?この調子だとどこの河原も増水して使えなさそうだな。」
それからしばしの間、寝られそうな場所を求め、ウロウロしていた。