幕末怪異聞録
**
程なくして、灰鐘が
「彼処がいい。」
と言って決まったのだが……
「ちょっ……!
こんな所勝手に使ったら罰当たるんじゃないのか!?」
「当たらねぇよ(笑)
こんなでかい寺なんだ、木の一つや二つ貸してくれていいだろ。」
そう言って木の幹にもたれる灰鐘。
「でも寒いな…。
これだから京は嫌いなんだよ。」
身をすくめる灰鐘を見た狼牙は、犬の姿から大狼の姿に変化し、灰鐘に寄り添った。
「これで寒くないだろ?」
「あぁ。
獣臭いがな。」
「そんなに凍えて死にたいのか?」
「冗談だよ。」
クスクス笑いながら重い瞼を落としていった。
「今日は少しはしゃぎすぎた…。
もう寝る。」
「おやすみ。」
「ん…。
おやすみ…。」