幕末怪異聞録


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事件から四日後——……



「土方さん。時雨いませんか?」


時雨はあの夜、姿を消してから帰ってこないのだ。


「いるわけねぇだろ。総司、おめぇは大人しくできねぇのか!」


「できません!」


「そんなことで胸を張るな!」


やいのやいの騒いでいるが、土方は些か苛立っていた。


(——あの馬鹿はどこをほっつき歩いてやがんだ?)


そんな苛ついている様子が分からないほど鈍感でもない沖田はこうして様子を見に来ていたのだ。



ガタガタッ!



「——!?」


外から何やら騒々しい物音と共に何かの気配がするため、二人は急いで外へ出た。



「———てめっ……!」




「——あ、ただいま。」


なんと、満身創痍な時雨が中庭に座り込んでいた。


もちろんそんな時雨に土方は——



ゴチーン!



「てめぇ!総司の世話をほっぽり出して何処行ってやがった!」



拳骨をお見舞いしたのだった。




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