幕末怪異聞録



————————…………



「——寒いけど、いい天気だな〜。」


縁側を歩く時雨は、グッと伸びをした。


「……。

時雨ぇ…。

てめぇなんで屯所にいやがんだ……。」


白い目をしているのは土方だった。


そう、時雨は何故か屯所に来ていた。


「だって総司が屯所に行きたいって言ったから、散歩のついでだよ。悪いか?」


「悪いわ!それより、散歩ってなんだ!大人しくさせておけ!」


「もう、うるさいな……。あんたも仕事あるんだろ?さっさと仕事に戻りなよ!」


そう言うと時雨は土方の背中を押して、しっしっと手でおいやった。


「おめぇも総司連れてさっさと帰れよ!」


「はいは〜い!」


ピラピラと手を振る時雨にため息を吐いた土方は、これ以上相手すると疲れるだけだと感じ、自室に戻っていった。



「————やっと行ったか……。」


時雨はキッと表情を引き締め、何かを探すように歩き始めた。


時雨もただ単に遊びに来たわけではなく、一つ気になることがあったから屯所に足を運んだのだった。




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