幕末怪異聞録


ーーーー……



「さて、総司は何処にいるのだろうか…?」


時雨はまたキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていた。


キョロキョロしているだけで怪しまれるが、黄金色の髪の女ってだけで何倍も怪しさが増す。


言わずもがな、すれ違う隊士がギョッとして二度見していた。


そんな時に現れたのは……


「おぉ!時雨ぇ!一杯しねぇか!?」


酒瓶を持った永倉と原田だった。


「いいねぇ!最近飲んでなかったんだよ!」


ただ酒が飲めると思ってニコニコしてついて行った。


が、


「ーー新八!!てめぇその手に持ってるのは何だ!夜に巡察あるの忘れてねぇだろうな……?」


「やべっ……!」


眉間に皺を寄せた土方が腕を組んで立っていた。


巡察のことなど頭になかった永倉は顔を引きつらした。


そんな永倉の表情を見た土方は更に深く眉間に皺をよせ、こめかみには血管が浮き出ていた。


ちなみに、ただならぬ空気に原田はとっくに逃げていた。(ひでぇぞ!by永倉)


「新八、お前は自分が組長であることの認識が足りねぇ!組長がだらしねぇと新選組自体がだらしねぇと思われんだよ。もっとしっかりしやがれ!」


「……。」


永倉は苦虫を潰したような表情を見せ、その歪んだ表情はどことなく悲しそうであった。


永倉は「すみません。」と頭を下げ、土方に背を向けその場を去る時にポツリと呟いた。


「ーーーあんたも変わっちまったのか……。」


その呟きが些か悲しそうで、聞こえた時雨は罰が悪そうに頭をかいた。









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