幕末怪異聞録
「俺は周りからどう言われようとかまわん。ただ、己の仕事をこなせばついて来る奴はついて来るし、離れる奴は離れて行くと思ってる。」
そう言った斎藤はフッと笑みをこぼし、あんたはどっちだろうな?と続けた。
そう言われた時雨は些か不服に感じたのかふくれっ面になった。
「私はお前の本質など知らんが、土方がお前を戻しこの仕事を任した時点で、斎藤一が信用たる人物であるというのは明白であろう?」
さも当たり前の様に話した時雨に斎藤は驚いた。
新選組副長が認めているならお前はそれだけ価値のある男だと言われているようだった。
斎藤にとってこの言葉は改めて土方副長がどのような人物であるか、その期待がどれだけ自分にかかっているのか理解した。
「そもそも、土方がこんな気を遣わなならん程てめぇのとこの奴は斎藤のこと認めてないってのかよ!
なぁ、斎藤!」
何故か今度は怒り気味に鼻息を荒くする時雨。
(随分と忙しい人だな……。)
そう思うと自然に笑みが零れた。
「そうだ。これから三浦さんが宴をするって言ってるんだが、あんたも来るか?」
「いや、私は帰るよ。総司を残しているからな。些か心配だ。」
そう言うと立ち上がり白の襟巻きを巻くと、斎藤に目を向け「飲み過ぎるなよ。」と悪戯に笑うとその場を後にしたのだった。