幕末怪異聞録
————翌日
時雨は掃除をし、沖田は猫と戯れていた。
そこにやって来たのは……
「沖田さん、体調はいかがですか?」
「あぁ、至って普通だよ。特に変わりなし♪」
薬箱を背負った山﨑だった。
ちょくちょく沖田の様子を伺いに来るのだが、ただ単に様子を見るだけではなく、新選組の様子も伝えに来ているのだった。
沖田もその話を聞くのが楽しみだった。
時雨もその話には興味があるのだが、うっかり聞いてはいけぬ話を聞いてしまっては自分が危うくなると思い、その場からは逃げていた。
今日もまたその場を離れようと雑巾と桶を持って立ち上がった。
「今日は嬢ちゃんも聞いとってかまんで。むしろ聞いた方がええ話があんねん。」
そう言って山﨑は時雨を止めた。
私が聞いてもいい話とは何だ?
と内心思いながら近くに腰掛けた。
「昨夜天満屋で三浦休太郎が襲われた。」
「——!?」
昨夜は時雨が斎藤に文を届けた。
しかしその時は何もなかったし何の気配も感じなかった。
(あの、後か……)
「うちの隊士と酒を飲んでたところに海援隊が乗り込んで来たらしい。
三浦さんは頬に怪我をしただけだったが、斎藤組長が後ろから斬られた。」
「一君が斬られた!?」
沖田は信じられないと言わんばかりに声を荒げた。