幕末怪異聞録


新選組の中でも沖田と一二を争う剣豪である斎藤。


そんな斎藤が斬られたとなれば相手がどれほど強かったのかと沖田は思った。


そんな沖田の心が読めたのか、山﨑は首を振った。


「部屋の灯りを消した上に狭い部屋に男が押し寄せたため、斎藤組長も上手く動けなかったのだろうと思います。」


「そんなことより斎藤はどうなんだ!?」


山﨑の方に顔をぐっと近づけた時雨は、斎藤の安否が何より知りたかった。


沖田は笑顔で時雨を山﨑から離すと、口を開いた。


「もちろん無事なんでしょ?」


笑顔の奥に見えた鋭い光に時雨はグッと押し黙った。


(私より何倍も心配だし、無事を祈っているんだもんな……。)


そんな二人を安心させるかのように山﨑は口角を上げた。


「無事ですよ。

何も武装しない状態で護衛していたわけではありませんからね。」


その言葉を聞いた二人は胸を撫で下ろした。


「山﨑もひどいぞ!そういうことは勿体ぶらずに言うもんだ!」


「人の話は最後まで聞けってオカンに教えてもらわんかったんか?」


「うん、そうだよ。人の話は最後まで聞こうね、時雨〜♪」


「〜〜〜〜っうるさいっ!」


時雨はいたたまれなくなり立ち上がり、また掃除を始めた。




< 305 / 321 >

この作品をシェア

pagetop