幕末怪異聞録
「―――ん……。」
目を覚ますともう辺りは明るくなっていた。
「あれ?」
そばにむすびが置いてあるのに気がついた。
恐らく灰鐘らの存在に気付いたお寺の住職が置いていったのだろう。
「世の中も捨てたもんじゃないな。」
クスリと笑い、むすびに手を付けた。
「食べるのか?
毒でも入ってたらどうすんだ?」
目を覚ました狼牙が声をかけた。
そんな様子を見た灰鐘は面白そうに笑った。
「毒が盛ってあるならお前が気付くだろ?
お前は鼻がよく効くからな。」
そう言ってむすびに口をつけた。
「うん、旨い。」
「んで?
今日も町で聞き込みするのか?」
犬の姿に戻った狼牙もむすびを頬張り始めた。
「当たり前だ。」
――――早く仇を取ってやる。