幕末怪異聞録
**
ある人物の聞き込みをするが全く情報はなかった。
すでに日は高く登ってしまっていた。
「なかなか見つからないなぁ…」
「はぁ…。
本当に京にいるのかよ…。」
橋の欄干にもたれ、朝置いてあったにぎりの残りを食べていた。
「もしかしたら、江戸で聞いたおじさんの見間違いって可能性もあるからね…。」
―――もう、三年も経つのにな……
隻眼に悲しみの色を落とし、空を見上げた。
ガシッ!!
「――!!」
「灰鐘さん、こんにちは♪」
驚いて振り返ると、浅葱色が目に入った。
「沖田さん?」
灰鐘がそう言うと、彼はゆっくりと笑った。
「はい♪沖田総司です。
君に話があるんだけど、時間いい?」
笑顔のままだったが、声色が真剣身を帯びていたため灰鐘は素直に頷いた。