幕末怪異聞録



そのまま八木邸へ案内され、土方の部屋まで連れて行かれた。



「土方さん、灰鐘さんを連れてきましたよ。」



「おう。通せ。」



スッ…



部屋では机に向かって書き物をしている土方がいた。


部屋に入り、座った灰鐘を見た土方は筆を置き、灰鐘に向き直った。



その顔は大層不機嫌なものだった。



「よう。昨日の今日でまさかてめぇが見つかるなんて思ってもなかったぜぇ?」



「ひゃー…。
全く怖いのぅ。

で?仕事が残ってるっつー話じゃろう?」



飄々とした様で、最初に出会った時の地方の言葉を使う灰鐘。


灰鐘の中で“灰鐘陽輝”としてあるときは、この言葉遣いをしようと決めているのだ。



そんな様子に気付いた土方はひらひらと手を振った。



「止めろ止めろ。どうせ“灰鐘陽輝”ならその言葉遣いなんだろうが…

嘘くせぇからいつもの口調にしとけ。」



めんどくさそうな顔でぼやく土方に灰鐘は面食らった顔をした。



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