幕末怪異聞録
そんな様子の土方に灰鐘は大笑いをした。
「言わなくとも分かるなど、まるで私の夫のようだな。」
「……。」
押し黙る土方に気付いた灰鐘は顔を上げた。
「何だよその心底嫌そうな顔は。
こんな可愛い嫁様だったら嬉しいだろう?」
「――お前、昨日仕事ほっぽりだして逃げただろう?」
相手するだけ無駄だと判断した土方は強制的に本題へ突入した。
灰鐘はそんな土方に「つまらん男だ。」と呟いたのは言うまでもない。
「まぁ、こんな所一刻も早く出たいと言う一心だったからな。」
腕を組む灰鐘はスッと目を閉じた。
「昨日鬼を片付けたお陰で半分は消えたな。
だが、巣がある。」
パッと目を開けた灰鐘は目線を土方の奥に向けた。
「この先の一番奥の部屋で何かあったのか?」
「!!」
その言葉に土方は、「まさか…。」と言う困惑の顔を見せた。