幕末怪異聞録
「何かありそうだな…。」
「そんなこと――…」
声を上げる土方を制した灰鐘。
「土方さん入るぜ?」
返事を待たずに障子が開いた先にいたのは原田だった。
「あれ?陽輝…だっけ?」
「原田と言ったな。
時雨と呼んでくれ。」
ふわっと笑いながら灰鐘は「時に――…」と続けた。
「お前はこの奥の部屋について知っているのか?」
灰鐘の視線を追いかけて、原田は事も無げにポロリと言葉を零してしまった。
「――芹沢さんの部屋だな。」
「原田!!」
土方の声にハッとするも、灰鐘はニヤリと口元を釣り上げた。
「芹沢…ねぇ…。
まぁ、部屋に案内してもらおうか?」
そんな様子に土方は額に手を当てた。