幕末怪異聞録
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「さてと、あんた私と二人で話したかったんだろう?
話すために来たんだ。
早く出ておいで。」
部屋の真ん中で正座をする灰鐘の前に靄(モヤ)がかかったと思った瞬間に女が現れた。
「やっと出てきた…。
で?何の話をする?」
目の前に現れたのが、あたかも友達かのように優しい声色で話しかける灰鐘。
『――あんさん、あたしが怖ないの?』
そこにいるのが当たり前に扱う灰鐘に驚く。
「怖くないさ…。
あんたが霊なら、私は半分妖怪だ。
怖いものはもっと見てきたし、何よりあんたは可愛い。怖がる要因が見つからんな…。
それより、あんた名前は何て言うの?
私は時雨。」
ニコッと笑う灰鐘に気持ちが和んだのか、口を開いた。
『時雨言うんやね…。
あたしは梅。
……あんさん変わってはるわぁ…(笑)』
クスクス笑う梅につられて灰鐘も笑った。