幕末怪異聞録
犬
□□
――――――――――…………
かくして灰鐘と狼牙は新選組に泊まり込むことになったのだが……
「何で新選組なんだよう!
幕府の犬の住処にいたら…。」
「キャンキャンうるせぇな…。
犬のお前が犬の住処につくのは当たり前だろ。」
「犬違いだー!
そもそも俺は狼だー!」
風呂に入った灰鐘は、狼牙の毛を拭いてやっていた。
「狼牙よ…。
心配する気持ちは分かってるつもりさ。だけど、これも仕事だ。嫌ならお前だけで逃げるんだな。」
乾いた狼牙の毛を撫でながら寂しい目を浮かべた。
「時雨…。
俺、お前を一人にしねぇから!」
ボフンッ!
「――!!
こら、止めんか馬鹿野郎!
人に変化するんじゃねぇ!」
狼牙は人に変化して、灰鐘にじゃれついていたのだ。
「時雨、入るよー!」
「や、ちょっ…!」
スッ…
「……。」