幕末怪異聞録


□□




――――――――――…………



かくして灰鐘と狼牙は新選組に泊まり込むことになったのだが……



「何で新選組なんだよう!
幕府の犬の住処にいたら…。」


「キャンキャンうるせぇな…。
犬のお前が犬の住処につくのは当たり前だろ。」


「犬違いだー!
そもそも俺は狼だー!」


風呂に入った灰鐘は、狼牙の毛を拭いてやっていた。


「狼牙よ…。
心配する気持ちは分かってるつもりさ。だけど、これも仕事だ。嫌ならお前だけで逃げるんだな。」


乾いた狼牙の毛を撫でながら寂しい目を浮かべた。


「時雨…。

俺、お前を一人にしねぇから!」


ボフンッ!


「――!!
こら、止めんか馬鹿野郎!

人に変化するんじゃねぇ!」


狼牙は人に変化して、灰鐘にじゃれついていたのだ。


「時雨、入るよー!」


「や、ちょっ…!」


スッ…


「……。」



< 56 / 321 >

この作品をシェア

pagetop