幕末怪異聞録
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グサッ
バサァ!!
――チン……
皆が寝静まった頃、灰鐘は前川邸にてあやかしを斬っていた。
「時雨さん、お疲れ様。」
振り返ると巡察から帰った藤堂が立っていた。
「…。」
ガチャリ…
「え…?」
藤堂の顔を見た途端、腰の物に手をかけ近づいた。
「動くなよ?」
そう呟いて、藤堂の懐に入り居合い抜きをした。
バサァ!!
カチン…
『あ゙ぁ゙~…!』
斬って出てきたのは小ぶりな鬼であった。
「ちっこい鬼じゃねぇか。
悪さしたんだ、仕置きが必要だな。」
冷たい目で鬼を見下ろし、背中の太刀を抜いた。
「…。」
先日の鬼も然り。
灰鐘の冷たい目から物凄い憎しみがにじみ出ていた。
――ザシュッ…!
やはり鬼に対して憤りが隠せないのだろう。
そう感じた藤堂だった。