幕末怪異聞録
後ろに顔を向ける陽斗につられ時雨も顔を向けた。
「おっかあ!おっとお!」
覚束ない足取りで此方に向かって走る、二人の子である陽輝がいた。
「陽輝!走ってると転ぶよ!」
そう言って陽輝の元へ行こうとすると…
すてーん!
「「あ…。」」
「ふぇ……うぅ…。
うわぁぁああん!!」
すっ転んでしまった陽輝が泣き出してしまった。
二人はすぐに駆け寄った。
「ほら、言わんこっちゃない…。」
「陽輝!男子ならばこれしきのことで涙を見せるんじゃない!」
「あんたは変なこと言わんでいいの。」
よく笑う家族であり、明るかった。
村での風当たりは酷かったが、時雨はこの家族の暖かい空気が大好きであった。
だからこの小さな家族を護っていこうと決めていた。
そんな矢先に辛い出来事が起こったのだ。