幕末怪異聞録
「は、陽輝が!!」
大きな音がしたかと思えば、陽輝が寝ていた方が崩れ落ちてしまった。
「陽輝!陽輝!!」
時雨は瓦礫の山に近寄り、瓦礫を次々に退けていった。
そして見つけた陽輝は傷だらけであった。
「可哀想に……。こんなに傷ついてね…。」
「…」
陽輝を抱き上げ頬を撫でるもピクリとも動かず、時雨はただ泣くことしかできなかった。
「陽斗ぉ……。
陽輝が…う、動か…ないよ……。」
「時雨…。」
陽斗が時雨に近寄ろうとしたそのとき、あいつが現れたのだった。
『半妖の姫はこんな所におったか……。』
着流しをさらりと着、灰銀色の髪を短く切り、赤色の瞳を持つ男がどこからともなく現れたのだ。
『探したぞ?』
「え?」
時雨に向かって言ったが当の本人は全く面識がなく、戸惑うばかりであった。