不思議な人
青年は聞き返した。
・・・
「主事さんだった…?」
「えぇ」
女教師はニコニコのまま、言った。
「とっても親切で、いい人だったわ」
「…あの、先生」
青年は昨日のことを話した。
トイレにペーパーが無く、3階に行ったら、主事だと名乗るものがいたこと。
そして、その人は服がボロボロだったこと。
別れ際、不思議な言葉をかけてきたこと。
女教師は話を聞くと、不思議そうに青年を見た。
「あなた、誰の話をしているの?」
「だから、先生の知り合いだって言う…」
「冗談きついわよ!」
女教師は笑った。
青年はじっと女教師を見た。
「どうしてです?」
「だって…」
女教師はじっと青年を見つめ返して言った。
「だって、彼は3年前の冬に亡くなったんだもの」
「え…?」
「学校のトイレットペーパーがきれてしまって、買いに行ってくださったんだけどね、なかなか戻ってこなくて。だから、心配になって私が電話をしたの。そしたら、出たのは先生…医者でね。ホント、ビックリよ」
「………」
青年は言葉を失った。
公園にペーパーが無いのは、よくわかる。
けど、学校にないなんて可笑しすぎる。
そして、主事さんのあの言葉。
「校内全てを掃除して、その後」
“トイレットペーパーを買いに行って事故ったんだ”
きっとそうだ。
だから、事故ったりすんななどと言ったのだ。
青年は職員室を飛びだした。