花日記
「人間、とは人ということか?」
「当たり前でしょう!」
あまり聞かない言い方だな。
「それより、貴方は誰?
変わった格好をしてるけど、俳優さん?
時代劇の撮影中なの?」
俺はこの時、答えたくないと思った。
足利を名乗りたくない、と。
「変わった格好はお前のほうだろう。
それに、はいゆうとは何だ?
じだいげき?」
俺がはぐらかしながらそういうと女はビクッとして
「知らないんだ…」
と呟いた。
「知らん。
俺は眠い。
そこをどけ。」
女が部屋の入り口を塞いでいるから俺は中に入れなかった。
「あ、ご、ごめんなさい…」
思ったより素直に女がどいたから、俺は部屋の奥に用意された褥に寝転んだ。