花日記

俺は確かに、綾子に…未来から来たと言う姫に惹かれている。



それは、間違いなく。



しかし、何故だかこれまでの女達と違って姫を抱く気になれなかった。



大事にしていたいのか、それとも俺が姫の知る未来というものを畏れているのか。



おそらく、それは後者だと思う。



綾子との会話の端々で感じるよくわからない言い回しとか、言葉とか。



綾子が“降ってきた”日に身につけていた奇妙な着物や、持っていた荷とか。



それから、夢で見た、薄墨色の世界とか。



そういう、未来を垣間見る度に、きっと俺は姫を畏れているんだろう。



確かに、惹かれているのに。


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